flowchart LR A["Sonic 3D Blast 5(GB・1998年ごろ)"] --> B["Sonic Adventure 7(GBC・1999年)"] B --> C["Pokémon Jade: Special Pikachu Edition(2001年ごろ)"] D["Pokémon Gold Version 2 / Pokémon Adventure(2000年ごろ)"] --> C D -. "ピカチュウのプレイヤー画像を流用したとされる" .-> C
Pokémon Jade (Special Pikachu Edition) 調査レポート
同名bootlegとの区別、成立経緯、内容、版違い、保存・エミュレーション
本作は、一般に「Pokémon Jade」と呼ばれる『携帯電獣テレファング』の非公式英訳RPGではありません。2001年ごろに流通したとされるGame Boy Color向けの非公認横スクロールアクションで、Makon Softが過去に制作した『Sonic Adventure 7』系作品を、ピカチュウを主人公にして再構成したものです。
現存資料では開発元を Makon Soft、英語版・中国語版の発売元を Ka Sheng(卡聖)、英語版の商品番号を GA098、中国語版を GA099 とする整理が主流です。ただし非公式流通品であるため、正確な発売日、会社所在地、各言語版の発売地域・順序などは確定できません。
英語版はステージ1のゴール標識に触れるとクラッシュし、通常プレイでは先へ進めないことで知られます。本リポジトリの対象ROMでも同じ不具合を再現し、別途、原因の解析とステージ2へ進める修正を確認しています。
1. 調査対象の同定
同名の別作品に注意
「Pokémon Jade」という名称は、少なくとも次の2作品に使われています。
| 通称 | 実体 | ジャンル | 本レポートの対象 |
|---|---|---|---|
| Pokémon Jade | 『携帯電獣テレファング Speed Version』の非公式翻訳・改変版 | モンスター収集RPG | いいえ |
| Pokémon Jade Special Pikachu Edition | 『Sonic Adventure 7』系の再構成版 | 横スクロールアクション | はい |
この混同は現在も多く、検索結果やゲームデータベースの説明にも、Special Pikachu EditionをTelefang系RPGとして紹介する誤記が見られます。両者を見分ける最も簡単な手掛かりは、タイトルに Special Pikachu Edition があること、ゲーム画面が横スクロールであること、全5ステージとして整理されていることです。Handheld Undergroundも両者を明確に区別し、Data CrystalのTelefang資料は別系統のJadeがSpeed Version由来であることを記録しています。
本リポジトリのROM
ローカルで対象ROMを直接検査した結果は次のとおりです。これはネット上の一般情報ではなく、本リポジトリが解析対象としている個体の識別情報です。
| 項目 | 観測値 |
|---|---|
| ファイルサイズ | 524,288 bytes(512 KiB) |
| SHA-256 | 0E90D7659339A1F52C733BDC2B502D033E1C4C4004F761B6C539B236FA7FDD45 |
| ROM内タイトル | POKEMONPLATINUM |
| CGBフラグ | 80(Game Boy Color対応) |
| ヘッダー上のカートリッジ種別 | 01(MBC1) |
| ROM容量コード | 04(512 KiB) |
| 外部RAM容量コード | 00(なし) |
| 新ライセンシーコード | GC |
| mGBA 0.10.3での識別 | GB_UNL_NT_NEW |
ROM内タイトルが画面上の商品名と一致しないこと、ヘッダーの標準MBC1表記だけでは実際のバンク切替を説明できないことは、非公認カートリッジのヘッダーを額面どおりに扱えない例です。POKEMONPLATINUM という内部名の由来は、今回確認できたオンライン資料には説明がなく、未解明です。
2. 基本情報
| 項目 | 現時点の整理 | 確度 |
|---|---|---|
| 画面上の英語名 | Pokémon Jade Version: Special Pikachu Edition | 高 |
| 対応機種 | Game Boy Color | 高 |
| ジャンル | 1人用横スクロールアクション/プラットフォーマー | 高 |
| 年代 | 2001年とする資料が複数。ただし月日は不明 | 中~高 |
| 開発 | Makon Softとする保存コミュニティの整理 | 中~高 |
| 発売・流通 | Ka Sheng(英語版・中国語版)とする整理 | 中 |
| 英語版商品番号 | GA098 | 中~高 |
| 中国語版商品番号 | GA099 | 中~高 |
| ステージ数 | 5 | 高 |
| 正規ライセンス | なし | 高 |
2001年、Makon、非公認作品という整理は、保存セットの索引であるTOSEC系リスト、MAMEのGame Boy Colorソフトウェアリスト、専門コミュニティのHandheld Undergroundで概ね一致します。商品番号と版違いはBootlegGames WikiのSonic 3D Blast 5系統記事および実物収集データベースのVGCollectで照合できます。
ただし、MAME系リストが中国として整理する一方、TOSEC系ファイル名はUS表記を採るなど、地域情報は一致しません。これは公式な発売記録ではなく、発見されたカートリッジや箱、ダンプに基づく後世の整理であるためです。本レポートでは「北米正式発売」のような断定を避けます。
3. 成立経緯とゲーム系譜
資料を総合すると、本作は完全な新作というより、Makon Softが使い回していたアクションゲーム基盤の一枝と考えるのが妥当です。
BootlegGames Wikiの系譜記事によれば、基礎になった『Sonic 3D Blast 5』はMakon Softが1998年ごろに制作した非公認Game Boy作品で、『Sonic Adventure 7』はそのカラー化・改変版です。本作はさらに色調、音楽、主人公・敵画像、導入部とタイトル画面を変更しています。
主人公ピカチュウは、ソニック用の体格と動きを残す縦長の造形です。専門資料では『Pokémon Gold Version 2』で使われたピカチュウ画像の流用とされ、近年抽出されたプレイヤー画像からも、ソニック系アニメーションを置き換えた性格が確認できます。
同じ2001年ごろには、姉妹作の『Pokémon Diamond: Special Pikachu Edition』も存在します。ただしDiamond側は『Super Mario Special 3』を下敷きにした別系統で、Jadeと同じゲームの対バージョンではありません。両者は導入映像を共有し、どちらも最初のステージから通常進行できない不具合を抱えるため、商品名だけを対にした企画だった可能性があります。Bulbapediaのbootleg概説とHandheld Undergroundがこの関係を記録しています。
4. ゲーム内容
導入ストーリー
箱・ゲーム内導入部が示す筋書きは、ピカチュウと仲間たちが不思議な森を探検中に激しい嵐に遭い、被害を受けたポケモンを救いながら脱出を目指す、というものです。箱の英文はVGCollectに転記されています。
この筋書きは独自に書かれたというより、短編アニメ『Pikachu’s Rescue Adventure(ピカチュウたんけんたい)』の市販VCDの紹介文から採られた可能性が非常に高いです。特にYesAsiaに残るVCD紹介の冒頭と箱文が一致し、同短編にも森と嵐、仲間を救う展開があります。この出所は専門コミュニティでも指摘されています。
一方、実際のステージ進行はこの物語を具体的に再現しておらず、既存のSonic系レベルとポケモン風の画像を組み合わせたものです。導入文は、ゲーム内容の説明というより商品をポケモン作品らしく見せる枠付けと考えられます。
プレイの特徴
- 横方向に進み、ジャンプを中心に足場と敵を越えるプラットフォームアクションです。
- 全5ステージが確認されており、背景・敵・アイテム・HUDの抽出資料がThe Spriters Resourceに整理されています。
- 最初に選ばれているステージは難度が高く、精密なジャンプを要求します。保存者のプレイ報告では、一部の段差は手前のポリゴン型の敵を誘導し、踏み台として跳ねなければ越えられないとされています。
- Sonic系の基盤を使う一方、本作では上昇中の左右操作が以前の版より緩和されたと報告されています。
- レベル設計、当たり判定、足場挙動などにはMakon系エンジン特有の不安定さがあります。エンジン概説は、移動足場の消失、床抜け、終了オブジェクトの誤動作など、同系統作品に共通する問題をまとめています。
本作が「ポケモンのゲーム」である部分は、主として商品名、導入画像、主人公・敵・アイテムの見た目です。公式シリーズの捕獲、育成、ターン制バトルはありません。
5. 既知の言語版・外装
少なくとも次の3言語版が現存し、ダンプ済みと報告されています。
| 言語 | 名称・表記 | 既知の情報 |
|---|---|---|
| 英語 | Pokémon Jade Version: Special Pikachu Edition | 商品番号GA098。黒いGB風シェルと透明緑のGBC風シェルの実物例がある |
| 中国語 | 寵物小精靈-翡翠版 / Chong Wu Xiao Jing Ling - Feicui Ban | 商品番号GA099 |
| スペイン語 | Pokémon - La Versión Esmeralda: Special Pikachu Edition | 「Jade」ではなく「Emerald」に相当する商品名 |
版違いの一覧はBootlegGames WikiとThe Spriters Resourceで一致します。英語版には黒と透明緑の2種類の外装写真が知られていますが、基板・ROM内容が常に同一であるとは限りません。非公認品は再生産、別業者による詰め替え、マルチカート収録があり得るため、ラベルやシェルだけで版を同定するのは危険です。
スペイン語版の流通量や希少性については所有者の報告が中心で、信頼できる生産数・販売数は見つかりませんでした。「希少」という市場評価は、現時点では定量化できません。
6. ステージ1終了時のクラッシュ
ネット上で知られていた現象
Handheld Undergroundは、ステージ1末尾の標識に触れるとクラッシュして通常進行できないことを2018年のダンプ公開時に記録しています。後続ステージを見る回避策として、RAMアドレス C27D を 01~04 に書き換え、ステージ2~5を直接選ぶ方法も示されました。
Bulbapediaや複数のbootleg資料も「最初のレベル後にクラッシュし、通常は完走不能」という点で一致しています。したがって、これは単一の壊れたダンプや一般エミュレーターだけの問題ではなく、少なくとも知られている英語版に含まれるプログラム上の不具合と考えられます。
本リポジトリで新たに確認したこと
本リポジトリでは、mGBA 0.10.3上でクラッシュを再現し、ステージ終了処理を静的・動的に追跡しました。その結果、2回目の別バンク呼び出しに渡す値が壊れ、コードではない領域へ実行が逸れることを確認しました。呼び出し条件を DE=1400 に修正したROMでは、ステージ1から2への正常遷移に成功しています。
これはオンライン資料にあった「どこで起きるか」「レベル番号を書き換えれば先を見られる」という情報を一段進め、対象ROMにおける命令レベルの原因と修正条件を示すものです。詳細はステージ遷移クラッシュの調査と修正をご覧ください。
ただし、現時点で動的に確認したのはステージ1から2への遷移です。全5ステージの通しプレイ、各言語版・実カートで同じ修正が成立するかは未確認です。
7. エミュレーションと保存
特殊マッパー
このROMは、標準ヘッダー上はMBC1に見えますが、実際にはNT/Makon系の特殊なバンク切替を必要とします。通常のMBC1として実行すると、誤ったROM領域をコードとして読み、画面崩れやクラッシュの原因になります。
このリポジトリで案内する範囲では、プレイにはNT-new対応の hhugboyまたはmGBAを使用してください。マッパーは、大きなROMのどの区画をCPUへ見せるか選ぶカートリッジ側の仕組みです。NT-newを知らないエミュレーターはヘッダーだけを見て標準MBC1として扱うため、ゲームが意図した区画を選べません。
修正版ROMのステージ遷移はmGBA 0.10.3で確認済みです。hhugboyはNT-newへ対応していますが、この修正版ROMでの通し確認はまだ行っていません。
hhugboyは、v1.2.5で後期Makon単品カートリッジ向けの NT new 対応を追加しました。GBX形式なら付加情報から自動選択でき、raw ROMでは「NT (Makon) new」互換モードを手動指定する案内があります。GBXは、raw ROMだけでは失われるマッパー情報をフッターに保持する保存形式です。
mGBAの公式READMEも、NT new(非公認MBC5類似)とPokémon Jade/Diamond用マッパーをサポート対象に挙げています。ここで注意すべき点は次のとおりです。
- 本作 Special Pikachu Edition: NT new系
- Telefang翻訳版 Pokémon Jade/Diamondの保護付き原版: Pokémon Jade/Diamond専用系
同じ「Jade」という名前でも必要な互換モードは同じではありません。
保存資料としての位置づけ
MAMEのソフトウェアリストにも本作が pkmnjspe として収録され、2022年のMAME 0.250では新しいNT/Makonカートリッジ対応とともに動作品へ昇格した記録があります。これは公式作品としての認定ではなく、実物・ダンプ・特殊ハードウェアの挙動が保存対象として整理されたことを意味します。
ROM配布サイトは存在しますが、本レポートでは入手先を扱いません。資料保存と検証では、ROM本体とは別に、ハッシュ、容量、言語、外装・基板情報、マッパー種別、ダンプ方法を記録する必要があります。
8. 情報の確度と未解明点
比較的確かな事項
- Special Pikachu EditionはTelefang系Jadeとは別作品です。
- Game Boy Color向けの横スクロールアクションで、全5ステージです。
- 『Sonic Adventure 7』系のプログラム・レベルを土台にしています。
- 英語、中国語、スペイン語の版が報告・保存されています。
- 英語版はステージ1終了時にクラッシュし、通常進行できません。
- 特殊なNT new系マッパーのエミュレーションが必要です。
有力だが公式記録で裏付けられない事項
- 開発元Makon Soft、発売元Ka Shengという帰属。
- 2001年発売という年代。
- GA098/GA099が各版の一貫した商品番号であること。
- 各画像・音楽・コードが、どの先行作品からどの工程で流用されたか。
未解明
- 正確な発売日、最初に発売された国・地域、販売経路、生産数。
- Makon Soft、NT、Ka Shengの契約・組織上の関係。
- ROM内タイトル
POKEMONPLATINUMの由来。 - 既知の3言語版すべてに同じクラッシュ原因があるか。
- 黒シェル版と透明緑シェル版、再版・マルチカート版のROM差分。
- 実機上でのステージ遷移修正の有効性と、ステージ2以降の完全性。
9. 総括
Pokémon Jade (Special Pikachu Edition) は、ポケモンの非公式RPGというより、1990年代末から2000年代初頭の東アジア系非公認Game Boy市場で行われた、エンジン・レベル・画像・商品名の再利用を示す資料です。Sonic系アクションの上にPokémonの外見と『Pikachu’s Rescue Adventure』由来とみられる物語を重ね、さらに同名のTelefang翻訳版の知名度にも接近した、多層的な再構成物といえます。
完成度は低く、製品状態では最初のステージ後に進めません。一方で、その壊れ方、特殊マッパー、言語版・外装違い、後年のエミュレーター対応まで含めると、bootlegゲームの制作・流通・保存を調べるうえで情報量の多い事例です。
参考資料と評価
| 資料 | 主な用途 | 本レポートでの扱い |
|---|---|---|
| Handheld Underground: Makon Crapstravaganza 2018 Part 2 | ダンプ経緯、ゲーム系譜、クラッシュ、レベル直接選択、マッパー | 専門保存者による実機ダンプ・検証記録として重視 |
| hhugboy公式リポジトリ | NT new、GBX、非公認マッパー対応 | 実装側の一次資料として重視 |
| mGBA公式リポジトリ | 対応マッパー、デバッグ・パッチ機能 | 実装側の一次資料として重視 |
| MAME gbcolor.xml | 年代・発売元・保存セット上の識別 | 保存データベースとして参照。公式発売記録とはみなさない |
| BootlegGames Wiki: Sonic 3D Blast 5 | Makon系譜、言語版、商品番号、外装 | 専門コミュニティの集成。単独では断定に使わない |
| Bulbapedia: Bootleg | 同名作品の区別、概要、姉妹作 | 二次資料として相互確認に使用 |
| VGCollect: GA098 | 実物画像、商品番号、箱文 | 収集家DB。外装・転記の確認に使用 |
| The Spriters Resource | 5ステージ、登場画像、言語別名 | 抽出素材の存在確認に使用 |
| YesAsia: Pikachu’s Rescue Adventure VCD | 箱文の出所比較 | 同一文言を示す販売記録として使用 |
bootleg作品の情報は、後世の収集家、ダンパー、エミュレーター開発者による復元が中心です。本レポートでは複数資料の一致とROMの直接観測を優先し、公式な発売記録のように見せないよう、確度と未解明点を分けました。リンク先の記述は将来更新される可能性があります。